(つづき)
倶留尊山への登りを途中まで行って、引き返す。重装備の防寒具が邪魔でしやうがない。一旦車に戻る事にして、龜池へと薄に被はれた急な山道を降りて行く。
朝日が射して薄野となつた龜池の霜を消し、光景は金波銀波の漣を思はせて、私を魅惑する。
光と陰の高原の薄野を、映画のロケハンのつもりで、カット割をするやうに撮影していく。
絶體絶命の境地となつてこの地に立った大津皇子のその時の事を ―― 大和飛鳥から白馬を疾驅させて、この畿内と畿外を區切る室生の山上で思案し、決心して禁を犯して伊勢の國へ、たゞ一人の同母姉である伊勢齋王の大伯皇女を訪ねていく大津皇子の姿を。
山々の錦秋は蒼天へときはまり、枯れ輝く薄野は金波銀波の漣となつて馬乘の青年の心情に反映し、思案は或種の野心となつて彼を大膽な思想と行動へと決心させていく。
そして、現實の時間から超脱して(自己劇化した者の意識で)物語の空間へ、悲劇へと疾走していく。

(つづく)
やまとまほろば:飛鳥&寧樂:一日と永遠 2002/1107














